supported by CTB
Columns
シリーズ物について、今回は、「チルドレン」のシリーズについてです。
2024年現在
の2作品が発表されています。
『チルドレン』は短編集ですが、「鴨居、陣内、永瀬、優子、盲導犬のベス」の学生時代を描く短編と、それより時代が後の、家裁調査官となった陣内と同僚の武藤を巡る話を描く短編の二種類が混在しています。
この構成について伊坂さんに聞くと
「最初の短編を書いた後で、そのまま続けるモチベーションがなくて、次はいきなり、登場人物が社会人になっていたら楽しいかも、と思ったんですよね。だから、2つ目の短編は、社会人になった陣内の話で。せっかくだから3つ目はもう一度、過去に戻ったら、また意外性があるかなと思って、ジグザグに時代を行き来する感じなんですよね。本が出た直後は評論家のレビューや賞の選評で、『こういう構成にする意味が分からない』と言われて『いや、わくわくするじゃないですか』と思ったんですけど(笑)、好みの問題なんですかね、こういうのは」
『サブマリン』は、40代となった家裁調査官の陣内と武藤の物語が書かれた長編で、永瀬や優子も登場します。
ただ、『サブマリン』には、『チルドレン』の学生時代のパートに登場した鴨居の姿がありません。そのことについて確認すると
「鴨居君に関してはどう書いたらいいのか、難しくて。デビュー前に賞に応募した『夢候よ{ゆめそうろうよ}』という長編があるんですけど、それが鴨居君が主役の話で、陣内や永瀬も出てくるんですよね。画家の鴨居玲が好きなので、タイトルも鴨居さんの絵の作品名から取っていて。で、鴨居玲の絵の雰囲気そのままに暗い感じの小説で、作品の最後、鴨居君が悲劇に巻き込まれちゃうんですよね。病院の外で、永瀬と盲導犬のベスが待っている場面がラストで、そこはかなり気に入ってるんですけど。時系列的には、『サブマリン』は、『夢候よ』の後になるので、何となく辻褄を合わせたほうがいいのかな、という気がして、断定もしないけれど、矛盾もしないような書き方にしたんでした」
とのことでした。その『夢候よ』は世に出すつもりはないんですか、と聞くと
「暗い話だし、陣内君はもっとエキセントリックだし、そのままは出せないんですよね。でも、『夢候よ』というタイトルは気に入っていて、鴨居玲さんの、教会が空に浮かんでるような青い絵があるんですけど、あれを表紙にした本にするのを夢想していました。鴨居玲さんの本だと思われちゃいそうですけど(笑)」
とのことです。
supported by CTB